2023年度 秋冬プログラム松山智一展:雪月花のとき
MATSUYAMA Tomokazu: Fictional Landscape
松山智一(1976年生まれ)は、ニューヨークを拠点に活動し、鮮やかな色彩と精緻な描線による絵画や、大規模なパブリック・アートとしての彫刻など、大胆さと繊細さを併せ持った作品を発表しています。その作品に描かれるのは、日本や中国、ヨーロッパなどの伝統的な絵画からの引用や、ファッション誌の切り抜き、実在する消費社会の生産物や日常生活で慣れ親しんだ商品やロゴなど、さまざまなイメージのサンプリングです。一見しただけでは引用元が判別不可能なほど、複雑に組み合わされた大量のイメージ群は、現代社会に生きるわたしたち自身を取り巻くものであり、いつかどこかで見ていたかもしれないものでありながら、普段は繋げて考えることの少ない、わたしたち一人一人の身体の奥底に蓄積された記憶の束が、形を持って現れたようでもあります。
こうした松山作品の制作の根底には、豊かな自然と歴史的な遺産が息づく岐阜に生まれ、アメリカ西海岸のストリートカルチャーに触れた少年時代、再び日本に戻ると、経済学を学んだ後、一度はアスリートの世界に身を置くも、デザインの道へと転身した二十代と、伝統文化から現代のカウンター・カルチャーまで、対極にあるものとして理解されることの多い世界の多様性を、身をもって実践してきた彼の半生が深く影響を及ぼしています。
本展は、松山がコロナ禍を前後する時期に制作した近作と本展で初めて発表される新作を中心に、アーティストとしての進化と深化の過程を紹介するものであり、常に新しい文化を受け入れてきた歴史が息づく街である弘前で、作家の新たな魅力を発見する機会となることでしょう。
アーティスト
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Photo: Akira Yamada
松山智一
1976年岐阜県生まれ、ブルックリン在住。絵画を中心に、彫刻やインスタレーションを発表。アジアとヨーロッパ、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結びつけて再構築し、異文化間での自身の経験や情報化の中で移ろう現代社会の姿を反映した作品を制作する。バワリーミューラルでの壁画制作(ニューヨーク/米国、2019年)や、《花尾》(新宿東口駅前広場、東京、2020年)、《Wheels of Fortune》(「神宮の社芸術祝祭」明治神宮、東京、2020年)など、大規模なパブリックアートプロジェクトも手がけている。近年の主な個展に、「Accountable Nature」龍美術館(上海/中国、2020年|重慶/中国、2021年)などがある。
展覧会のみどころ
1. 作家にとって初の大規模個展で近年の代表作を一望の下に紹介
2009年、ニューヨークのギャラリーで開催された初個展から14年、本展は、年々活動の幅を広げながら、精力的に作品発表を続ける松山の作品を紹介する日本初の美術館での個展です。総展示面積1200㎡を超える美術館個展としては、作家にとって初の規模でもあります。 出品作品には、ニューヨークのスタジオで大人数のスタッフと共に制作を行ってきた松山が、コロナ禍でスタジオ制作ができなくなった時、遠隔でスタッフたちとの制作を試みた《Cluster 2020》(2020年)や、たった一人で制作した《Broken Train Pick Me》(2020年)など、コロナ禍を通じて松山が創作活動の意味を問い続けた近年の作品群や、ミュージシャンのゆずからの呼びかけで実現したコラボレーションによる《People With People》(2021年)など、松山の活動を代表する作品が含まれており、本展は松山の代表作を一望できる機会となります。
2. 初公開の新作、および日本未公開の作品を多数展示
本展では、初公開の新作9点を含む日本初公開作品23点に加えて、近年の絵画や彫刻、計30件を紹介します。洋の東西や時代を超える多種多様なイメージ群のコラージュから生まれた緻密な絵画、パブリック・アートとして屋外設置されることも多いステンレス・スチール製の立体作品といった松山の代表的な作品に加えて、日本では初公開となる極彩色の立体作品2点《Mother Other》《This is What It Feels Like ED.2》(ともに2023年)が出品されます。これらは、嵌玉眼(かんぎょくがん)や京都の截金(きりかね)職人による截金文様などの伝統技法と、FRPにポリウレタン塗装という、新旧の彫刻技法が融合されることで生まれた作品です。
3. 制作の背景を知ることのできる展示構成
松山の制作は、作家が日常的におこなっている伝統的な美術に関するリサーチと、日常生活の中で収集した大量のイメージ群とが、自在に組み合わされることで生まれます。1枚の絵画作品、1体の彫刻が生まれるには、10〜20にも及ぶような文字通りに古今東西のイメージのレファレンスがあり、それらが松山の手によって組み合わされていきます。本展では、普段目にすることのできない、こうした制作の過程で引用された資料やスケッチなどを紹介し、松山の作品世界の一端を解き明かします。
展覧会タイトルについて
タイトルの「雪月花のとき」とは、中国の唐代中期の詩人である白居易(白楽天・772-846年)が著した詩の一節からの引用です。同詩は、官吏として各地を転々としながら詩作を続けた白居易が、遠く離れた土地にあるかつての部下で友人でもある殷協律を、季節が変わっても思いつづける気持ちを詠ったものでした。そこに込められた思いは、現代において、世界中の多様な人々や文化が交差する街であるニューヨークを拠点に、日本とアメリカという自らのルーツとなった土地の文化と、中国やヨーロッパなど、世界の視覚芸術の歴史を形作ってきた土地に蓄積された文化、そして、ハイアートとカウンター・カルチャーやポップ・カルチャーまで、等しく自らのフィールドとして向き合っていこうとする松山の姿勢に重なってきます。加えて、それに対応する英語のタイトル「Fictional Landscape」は、松山の代表的なシリーズ作品であり、身近なもののようでありながら「ここにはないどこか」へと通じる、想像力によって生まれるもう一つの世界を表します。
『松山智一展:雪月花のとき』公式書籍発売
展覧会全出品作品の図版と会場風景や論考を収録した、「松山智一展:雪月花のとき」の公式書籍です。当館と同時期に開催された宝龍美術館(上海、中国)での様子も紹介。作家のロング・インタビューも掲載されています。展覧会ポスターなどを手がけた加藤賢策(LABORATORIES)による豪華なデザインです。
美術館隣のミュージアムショップでお買い求めいただけます。
*オンライン販売はこちら
・発売日:2024年2月18日
・販売価格:3,300円(税込)
・サイズ:208ページ、A4判
・デザイン:加藤賢策+望月滉大(LABORATORIES)
・論考:
木村絵理子(弘前れんが倉庫美術館副館長兼学芸統括)
南條史生(弘前れんが倉庫美術館特別館長補佐/宝龍美術館ゲスト・キュレーター)
・対談:
松山智一×南條史生
展示風景動画
展覧会紹介動画
アーティスト × ユーストークセッション
2023年10月29日(日)に開催された関連プログラム「アーティスト × ユース トークセッション」のアーカイブ動画を公開しています。
開催概要
- 会期:2023年10月27日(金)〜 2024年 3月17日(日)
休館日:火曜日、年末年始[2023年12月25日(月)〜2024年1月1日(月)]
※ただし、2024年1月2日(火)、1月3日(水)は開館
開館時間:9:00-17:00(入館は閉館の30分前まで)
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主催:弘前れんが倉庫美術館
特別協力:KOTARO NUKAGA、MATSUYAMA STUDIO
特別協賛:スターツコーポレーション株式会社
協賛:株式会社大林組、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社メルコグループ
後援:東奥日報社、デーリー東北新聞社、陸奥新報社、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、エフエム青森、FMアップルウェーブ、弘前市教育委員会 - 観覧料[税込]:
一般 1,300円 (1,200円)
大学生・専門学校生 1,000円 (900円)
※()内は20名様以上の団体料金
以下のサービスをご利用の場合にも、団体料金が適用されます。詳しくは各リンクをご参照ください。
○観覧料割引駐車場 詳しくはこちら
○わにサポ 詳しくはこちら
※以下の方は無料
・高校生以下の方
・弘前市内の留学生の方
・満65歳以上の弘前市民の方
・ひろさき多子家族応援パスポートをご持参の方
・障がいのある方と付添の方1名
当館に駐車場はございません。
観覧料割引駐車場をご利用の方は、観覧料が100円引きになります。(2名まで)
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