【開催予告】⼤正⇆令和アヴァンギャルド
萬鐵五郎、棟方志功から現代アートまで
100年を隔てた二つの時代の「アヴァンギャルド(前衛)」を弘前でたどる
「アヴァンギャルド(前衛)」とは何でしょう?いつの時代のどんな表現のことでしょうか?青森や北東北には、どんな作家たちがいたのでしょうか?これは、「アヴァンギャルド」という言葉が日本で使われるようになった大正時代と、現代のアーティストたちの表現を並べてみる展覧会です。津軽地方には、「いぱだだ」という言葉があります。人やものの様子が「一風変わっている」という意味。大正時代の青森では、たとえば洋画家になろうと決意すること自体が、まさに「いぱだだ」な試みでした。
本展には、大正時代の青森を中心とする北東北の作家たちの作品と、令和に活動する現代の作家の作品が登場します。大正と令和の作家たちはともに、目まぐるしく変化する社会の中で実践できることを模索し、活動を続けてきました。私たちにとっての「前衛」とは今どこにあるのか、2つの時代を行き来しながら、一緒に考えてみませんか。
出品作家:
【大正時代の作家】阿部合成、大川亮、池田淑人、今純三、小西正太郎、下澤木鉢郎、鷹山宇一、橋本花、羽場金司、福田剛三郎、松山忠三、棟方志功、萬鐵五郎 ほか
【令和の作家】市原えつこ、泉田剛、おおだいらまこ、小森はるか+瀬尾夏美
当館コレクションより出品:雨宮庸介、笹本晃、畠山直哉
アーティスト
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Photo by Hayate Yagi泉田剛(いずみた ごう)
2001年、青森県弘前市生まれ。東京と弘前を拠点に活動。2024年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。建築を起点に、解体と記憶の継承を主題として制作を行う。使われなくなった建築や放置された構造物を解体・再構成し、彫刻へと転換する実践を展開。彫刻、建築、グラフィックデザインの領域を横断しながら、建物の解体を単なる消失ではなく、土地に蓄積された記憶や風景を次の時間へと引き継ぐための方法として捉え直す。2025年、プロジェクト「解体と記憶/Disassembly and Memory」が文化庁「メディア芸術クリエイター育成支援事業」に採択。
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Photo by Yujiro Ichioka市原えつこ(いちはら えつこ)
1988年、愛知県生まれ。東京を拠点に活動。2025年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を提示する。美術の文脈に依らず広く楽しめる作品性と日本文化に対する独特のデザイン的な視点を取り入れ制作を行う。主な個展に「デジタル・シャーマニズム ―日本の弔いと祝祭」(ICC、東京、2016年)、「ディストピア・ランド」(CCBT、東京、2025年)。第16回光州ビエンナーレ「UCCN Pavilion」(韓国、2026年)、「Ars Electronica Festival 2025: Panic」(オーストリア、2025年)、「New Eden」(ArtScience Museum、シンガポール、2023年)などの国際展にも参加。
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おおだいらまこ
1995年、青森県黒石市生まれ。秋田県を拠点に活動。2021年尾道市立大学大学院美術研究科油画コース修了。絵画作品と鑑賞者を含めた展示空間を主題に制作を行う。鑑賞者と絵画作品との関係性への問いを起点に、展示形態そのものの再考や、平面性にとどまらない絵画作品の制作を通して、「新しい絵画」の可能性を探求している。最近は、鑑賞者による作品の写真撮影に着目し、その行為によって生まれる作品との関係性や体験をテーマに制作を展開している。個展「青天#」(横濱ゲートタワー Start Gallery 2+4、神奈川、2024年)、公募展「Idemitsu Art Award 2025」(国立新美術館、東京、2025年)など。
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Photo by Naoshi Fuda小森はるか+瀬尾夏美(こもり はるか + せお なつみ)
小森はるか:1989年、静岡県生まれ。埼玉県を拠点に活動。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科修了。
瀬尾夏美:1988年、東京生まれ。東京を拠点に活動。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。
東日本大震災後のボランティア参加をきっかけにユニットとしての活動開始。2012年より3年間、陸前高田市に暮らしながら制作に取り組む。2015年仙台にて土地と協働しながら記録をつくる組織・一般社団法人NOOKを設立。ユニットとして全国各地に赴いてフィールドリサーチを行い、制作と対話の場づくりを行う活動とともに、小森、瀬尾個人としても映像作品や著作を発表している。グループ展に「ニューアートシーン・イン・いわき 小森はるか+瀬尾夏美」(いわき市立美術館、福島、2024年)、「コレクション・ハイライト+ コレクション・リレーションズ 2023-II」(広島市現代美術館、広島、2023年)、「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol. 18」(東京都写真美術館、東京、2021年)など。
展覧会について
大正時代の社会変革と弘前の動き
大正時代(1912-1926年)は、現代に続く生活の基盤や価値観が形作られた時期でした。義務教育の普及により、日本の就学率や識字率は1926 [大正15/昭和元]年の時点で100%近くまで向上します。人々の政治への関心も高まり、大正デモクラシーと呼ばれる思潮や社会運動を通じて、民主主義や自由主義の概念が浸透します。1925 [大正14] 年の男子普通選挙法成立が国民の政治参加をうながす一方、反戦、反体制の声を押さえ込む治安維持法も同時に成立しました。さらに、平塚らいてうが発起人となった、日本初の女性による文芸団体「青鞜社」が創立されるなど、新しい女性像が目指された時代でもありました。こうした変化の波は地方にも届きます。たとえば弘前では、専門的な裁縫技能を身につけることで女性の自立を支援した「弘前和洋裁縫学校」(1923 [大正12] 年創立、現「学校法人柴田学園」)の開校をはじめ、新しい教育や文化の実践が生まれました。
北東北の「アヴァンギャルド」
大正時代の芸術家たちは、海外留学だけでなく、雑誌や書物などを通じてヨーロッパの美術における最新の動向に刺激を受けながら、それぞれの表現を模索しました。
大正時代の北東北において、「アヴァンギャルド」とはどのような意味を持っていたのでしょうか。当時、東京へ出て美術を本格的に学ぶ機会は、経済的な支援を受けられる作家に限られ、洋画家として活動しようと決意すること自体が、前衛的で「異端」な試みでした。
メディアの登場、普及から令和の「分断」へ
この時代には、新聞や雑誌を読むことが一般化し、1925 [大正14]年にはラジオ放送も始まり、マスメディアを通じて人々は世界情勢を知るようになります。大正時代は、情報の共有を通じて、共通の価値観や集団的な記憶を形成し「はじまりの時代」であったといえるでしょう。大正時代の終わりから100年を経た令和の現在、SNSを通じた情報の共有が主流となり、誰もが手軽に情報を得て、自らも発信できる場を手に入れられるようになりました。一方で、オンラインのコミュニティは同じ価値観を持つ人々の間で閉じられ、異なる意見を排除し合うような「分断」も生じています。かつて、テレビや新聞などのマスメディアを通して人々が共有していた、共通の知識、集団的な記憶や価値観は失われつつあるのかもしれません。
本展では、大正時代の作品とともに、それぞれの方法で問いをたて、記憶や記録のあり方と向き合う4組の現代の作家による作品を展示します。現代の社会でもとめられる即時性や効率性とは異なる時間軸から、独自の視点で記憶や記録と向き合う彼らの姿勢を、今この時代における「アヴァンギャルド」のひとつの形として捉え、紹介します。
展覧会の見どころ
大正時代に芽吹いた北東北の「異端児」たちによる独自の表現
萬鐵五郎《点描風の自画像》1912年頃岩手県立美術館蔵
本展の冒頭では、青森を中心として岩手と秋田を含む北東北で大正期に活動した作家や関連資料を紹介します。明治末期から大正期にかけて、画家を目指す若者たちの間に広がった技法として油彩画が挙げられます。北東北でも、萬鐵五郎が参加した岩手県の「北虹会」をはじめ、複数の洋画団体が生まれました。岩手出身の萬鐵五郎(1885–1927)は、東京美術学校卒業後に故郷の土沢(現・花巻市東和町土沢)へ戻り、東京の画壇から離れて造形の探究に没頭します。青森市出身の棟方志功(1903–1975)はゴッホに強い憧れを抱き、青森の仲間たちと洋画団体「青光画社」を結成して、独学で絵画の研究を重ねます。弘前生まれの今純三(1893–1944)は関東大震災を機に青森へ戻り、兄・今和次郎の考現学調査に同行して故郷の風俗を記録したほか、青森の美術教育の礎を築きました。それぞれの境遇の中で独自の表現を切り拓いた作家たちの姿勢から、大正期の油彩画における「前衛」の姿を探ります。
令和に新たな表現を切り開く、東北ゆかりの作家・作品を紹介
泉田剛《解体と記憶》2025年 作家蔵Photo by Hayate Yagi
人々が共有する「大きな物語」が失われつつある現代。本展では、それぞれの方法で問いを立て、社会と向き合うことで生まれた現代の作家たちの作品を紹介します。市原えつこは、秋田県男鹿市の伝統芸能「ナマハゲ行事」を都会へ移植し、伝統から切り離した機能としての祭事に注目して作品化したり、人型ロボットを用いて故人の記憶を現代テクノロジーと融合させ新たな弔いや祈りの形として可視化したりするなど、伝統と現代社会の接点をユーモラスに探ります。小森はるか+瀬尾夏美は、東日本大震災を機に被災地へ足を運び、個々人の体験や思いを語り直すことを通して、土地の記憶を紡ぐことを試みてきました。弘前市出身の泉田剛は、役割を失った建物を解体し、新たなモニュメントを作り、未来の遺跡として残そうとします。青森県黒石市出身のおおだいらまこは、日常の中で撮影した写真をもとに絵画を制作し、デジタルとアナログを横断しながら現実のイメージに加筆を繰り返すことで、個人の記憶の正しさとは何かを問い直します。
「日本で見られるアート100選」選出の笹本晃作品を展示
笹本晃《スピリッツの3乗》2020年 弘前れんが倉庫美術館蔵Photo by Naoya Hatakeyama
笹本晃《スピリッツの3乗》は、当館のコミッションワークとして制作された大型インスタレーションです。開館記念展「Thank You Memory — 醸造から創造へ —」(2020年)で初公開された本作は、美術館となる前の煉瓦づくりの酒造工場や、倉庫だった頃の空間に残されていた窓や扉を用いて構成されています。かつてこの場所に存在した人々の気配に想いを巡らせ、空間に新たな風を吹き込みます。
本作は、国内美術館が収蔵する優れた作品のひとつとして、国立アートリサーチセンターが実施する「日本で見られるアート100選」(「日本の現代アート」部門)に選定されました。
開催概要
- 会期:2026年12月4日(金)〜2027年5月16日(日)
休館日:火曜日(ただし2月23日、4月13日、20日、27日、5月4日は開館)、12月26日(土)〜1月1日(金)、2月24日(水)、5月6日(木)
開館時間:9:30-17:00(2月28日まで)
9:00-17:00(3月1日以降)
入館は閉館の30分前まで
会場:弘前れんが倉庫美術館 - 主催:弘前れんが倉庫美術館
- 協賛:スターツコーポレーション株式会社、株式会社大林組、株式会社NTTファシリティーズ
観覧料[税込]:
当館に駐車場はございません。
一般 1,600円
大学生・専門学校生 1,000円
高校生以下無料
[弘前市民料金] 一般 1,000円、大学生・専門学校生 500円
※弘前市民の方は、受付で住所が確認できるものをご提示ください。(他の割引との併用不可)
※以下の方は無料
・高校生以下の方
・弘前市内の留学生の方
・満65歳以上の弘前市民の方
・ひろさき多子家族応援パスポートをご持参の方
・障がいのある方と付添の方1名
観覧料割引駐車場をご利用の方は、観覧料が100円引きになります。(2名まで)
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