【開催予告】開館5周年記念杉戸洋展:えりとへり / flyleaf and liner

2025年12月5日(金) ― 2026年5月17日(日)
  • デザイン:服部一成

    デザイン:服部一成

  • 杉戸洋《untitled》2025年 作家蔵©︎Hiroshi Sugito Photo: Hiroshi Sugito

    杉戸洋《untitled》2025年 作家蔵
    ©︎Hiroshi Sugito Photo: Hiroshi Sugito

  • 杉戸洋《color tree 2》1994/2024年 作家蔵©Hiroshi Sugito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery Photo by Kenji Takahashi

    杉戸洋《color tree 2》1994/2024年 作家蔵
    ©Hiroshi Sugito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery Photo by Kenji Takahashi

  • 杉戸洋《untitled》2017年 作家蔵©Hiroshi Sugito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery Photo by Kenji Takahashi

    杉戸洋《untitled》2017年 作家蔵
    ©Hiroshi Sugito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery Photo by Kenji Takahashi

  • 杉戸洋《untitled》2022年 作家蔵©Hiroshi Sugito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery Photo by Hiroshi Sugito

    杉戸洋《untitled》2022年 作家蔵
    ©Hiroshi Sugito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery Photo by Hiroshi Sugito

現代の日本を代表する画家の一人である杉戸洋(1970年生まれ)は、1990年代から国内外での作品発表を続けてきました。作品に登場するのは、小さな家や船、果物、木々や雨粒といった、私たちの生きる世界の中の身近なものや自然です。こうしたモチーフが、線や幾何学的な図形とともに繊細かつリズミカルに構成され、みずみずしい色彩で描き出されます。

本展で、杉戸は「余白」に目をむけます。たとえば、絵画の裏側で、カンヴァスを囲む「えり」や「へり」として貼られた紙や木片のように、すぐには気が付かない場所にあるものです。こうした「余白」は、本の表紙をめくると現れる「あそび紙 (flyleaf)」や、洋服の「裏地(liner)」など、あらゆる場所に潜んでいます。杉戸はそれらの前で立ち止まり、心を傾けることから制作をはじめるのです。本展では、1990年代から最新作までの絵画を中心に、杉戸の作品を紹介します。

また、本展のコラボレーターとして、グラフィック・デザイナーの服部一成を迎えます。杉戸の作品に触発されて、服部がデザインした壁紙が貼りめぐらされた空間の内外に、杉戸の絵画と服部の写真が展示されることで、より強く「えりとへり / flyleaf and liner」のコンセプトが際立つ空間が立ち現れます。

アーティスト

  • 杉戸洋

    1970年愛知県生まれ。1992年愛知県立芸術大学美術学部日本画科卒業。
    1990年代の活動初期から国内外で数多くの展覧会に参加。主な個展として、「FOCUS」(フォートワース現代美術館、アメリカ、2006年)、「天上の下地 prime and foundation」(宮城県美術館、宮城、2015年)、「frame and refrain」(ベルナール・ビュフェ美術館、静岡、2015年)、「こっぱとあまつぶ」 (豊田市美術館、愛知、2016年)、「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」(東京都美術館、東京、2017年)の他、海外でも多数の個展を開催。「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」(吉井酒造煉瓦倉庫、弘前、2006年)に参加。
    平成29年度(第68回)芸術選奨、文部科学大臣賞受賞。

本展コラボレーター

服部一成(グラフィックデザイナー)
1964年生まれ。ライトパブリシティを経てフリーランス。主な仕事に「キユーピーハーフ」の広告、雑誌『流行通信』『here and there』『真夜中』のアートディレクション、弘前れんが倉庫美術館、三菱一号館美術館、新潟市美術館のVI計画、ロックバンド「くるり」のアートワークなどがある。毎日デザイン賞、亀倉雄策賞、ADC賞、東京TDCグランプリなどを受賞。

展覧会の見どころ

1.服部一成とのコラボレーション

本展のコラボレーターである服部一成は、弘前れんが倉庫美術館のロゴマークなどのVI(ビジュアルアイデンティティ)のデザインをはじめ、雑誌や広告、ミュージシャンのアートワークなど、幅広く活躍するグラフィックデザイナーです。服部の仕事の中でも、杉戸が強く印象に残っていると語るのが、ファッション雑誌『流行通信』のアートディレクション(2002-04年)です。多様なクリエイターが関わることで作られていた同誌は、ファッションという垣根を超えた創造的刺激にあふれており、とりわけ服部自身の撮影した写真やコラージュからなる大胆かつ自由な誌面構成に、杉戸は「制作する上でのヒントがあった」と語ります。
また服部が『流行通信』に携わった2000年代前半は、当館が美術館になる前の煉瓦倉庫(「吉井酒造煉瓦倉庫」)で、奈良美智の3度の展覧会 * が開催された時期でもありました。杉戸は2006年の「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」に参加するため、この時期、度々弘前に足を運んでおり、杉戸にとって、弘前の記憶は服部による『流行通信』の時代と重なり合っているのです。
杉戸からの呼びかけで実現する二人のコラボレーションは、弘前れんが倉庫美術館の空間や土地の記憶にも共鳴するものになるでしょう。

*2002年「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」、2005年「From the Depth of My Drawer」、2006年「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」。市民を中心にしたボランティアが会場作りから会期中の運営までを担い、県内外から延べ15万人以上が訪れた。三度の展覧会の成功をひとつの大きなきっかけとして、弘前れんが倉庫美術館が誕生した。

2.奈良美智との共作を紹介

弘前れんが倉庫美術館では、開館以来コミッション・ワークを中心に収蔵してきた作品を、コレクション展として、今後紹介します。杉戸洋展と同時開催する本展では、「北へ向かって」と題して、当地ゆかりの作家たちの作品に加えて、弘前出身の奈良美智と、杉戸洋が2004年に共作した作品を特別出品します。
杉戸は、美大を目指して美術予備校に通っていた高校時代、当時、愛知県立芸術大学に通いながら講師をしていた奈良と出会います。その後も親交を深め、2004年にオーストリア・ウィーンでの滞在制作中にコラボレーションをおこないました。また2006年には、杉戸が奈良からの誘いで「A to Z」展に参加し、絵画を発表しました。
杉戸と奈良の共同制作の基盤には、長年の信頼関係があります。形や線、色の扱い方の違いが互いの刺激となり、ドローイングや絵画、彫刻作品が生み出されてきました。近年、杉戸は、1990年代の自身の作品に加筆し、過去の自分と対話するような創作を続けています。二人の共作もまた、あらかじめ完成形を定めず、時には長い未完成の期間を経て加筆されます。こうした創作のあり方は、未完の作品が持つ、時を超えて変化する豊かさの可能性を示すようでもあります。本展では杉戸と奈良が2004年に共作した絵画に加えて、当時のモチーフを2022年に彫刻として発表した際の原型を紹介します。

3.煉瓦造りの建築と呼応する、杉戸洋の最新作を紹介

杉戸は身の回りの様々な事物の形や質感に注目し、作品として再構成します。額縁や台座、作品が設置される空間の床や壁など、作品を成り立たせる多様な要素への関心から、作品を展開します。
弘前れんが倉庫美術館は、明治・大正期に、酒造工場として建てられました。改修を担当した建築家・田根剛が掲げた「記憶の継承」というコンセプトのもと、かつての倉庫の面影を最大限に残して美術館へと生まれ変わりました。杉戸は、この煉瓦倉庫の空気や質感を感じ取り、本展の展示構成を検討しました。鑑賞者の意識は、杉戸の作品と向き合ううち、作品が置かれた空間全体へと広がり、新たな発見や想像力がもたらされることでしょう。
本展では、封筒の切れ端や段ボール、陶など身近な素材を自在に組み合わせた小作品や、1990年代に制作した未発表の絵画に再び手を加えた作品群が並び、杉戸の創作の最新の姿を体感できる機会となります。

展覧会カタログ

本展の公式カタログは、2026年春に出版レーベルのHeHe(ヒヒ)より発行予定です。

開催概要

  • 会期:2025年12月5日(金)〜 2026年5月17日(日)
    休館日:火曜日(ただし4月14日(火)・21日(火)・28日(火)、5月5日(火・祝)は開館)、12月26日(金)− 1月1日(木)、5月7日(木)
    開館時間:9:30-17:00(2月28日まで)
    9:00−17:00(3月1日以降)
    入館は閉館の30分前まで
    会場:弘前れんが倉庫美術館
  • 主催:弘前れんが倉庫美術館
  • 特別協賛:つみえ基金、スターツコーポレーション株式会社
    協賛:株式会社大林組、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社西村組
    協力:小山登美夫ギャラリー
    後援:東奥日報社、デーリー東北新聞社、陸奥新報社、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、エフエム青森、FMアップルウェーブ、弘前市教育委員会
  • 観覧料[税込]:
    一般 1,500円 (1,400円)
    大学生・専門学校生 1,000円 (900円)
    高校生以下 無料
    ※()内は20名様以上の団体料金
    ※弘前市民は当日料金から500円引き(他の割引との併用不可)。受付で住所が確認できるものをご提示ください
    ※以下のサービスをご利用の場合にも、団体料金が適用されます。詳しくは各リンクをご参照ください
    ○観覧料割引駐車場 詳しくはこちら
    ○わにサポ 詳しくはこちら

    ※以下の方は無料
    ・高校生以下の方
    ・弘前市内の留学生の方
    ・満65歳以上の弘前市民の方
    ・ひろさき多子家族応援パスポートをご持参の方
    ・障がいのある方と付添の方1名


    当館に駐車場はございません。
    観覧料割引駐車場をご利用の方は、観覧料が100円引きになります。(2名まで)
    アクセス詳細はこちら

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