帰って来た5人の円卓会議

N=野口 F= 藤田 O= 岡倉 T=寺山 J=ジョン

  • T:「私は『質問』になりたいと思っています。いつでも『なぜ?』と問いつづけ、年老いることのない、みずみずしい問いかけをしたいのです。ひとつ目は表現の自由についてどうお考えでしょう?言い換えれば、もしそれを奪われた時、あなたはどうするのかと聞きたいです。」

  • N:「それが奪われたとしたら、残念なことですね。でも泣き言なんか言っていられません。努力と勉強で乗り越えねばならないのです。」

  • F:「私はね、カンヴァスに向かって描いているときはいつだって、世界のどこにいたって自由になれる方法を会得したんだ。そう簡単に奪われるわけがない。他者がそのできあがった絵を売り絵だとか、お上のいいなりの絵だと言ったって構やしない。わたしは自由なのだから。」

  • J:「自由なんてものは守らない限り、黒い政治家達から巧妙に奪われてゆくものさ。僕らは政治に関心がないわけじゃないんだ。ただ政治家が無関心にさせているのさ。」

  • T:「話が噛み合わないですね。しかし噛み合わない話を聞くことがむしろ贅沢な時間かもしれません。」

  • N:「ではあなたのいう『自由』とはなんなのでしょう?」

  • T:「うーん、それは恋をする対象です。なぜならばフランス語で『自由』はラ・リベルテ、女性名詞なのでね。さて、質問を続けますが『戦争』、あるいは『疫病』と聞いたら何を思うかお聞かせください。始めに言っておきましょう。『私はあなたの病気です』。」

  • F:「私が立ち向かったのは『戦争』でしたね。全身全霊で戦争記録画を描いてきた。色々あったがほとんどの絵はその後も残り、人類の記録として語り続けている。描いたことに後悔はない。しかし、その代償に祖国を追われたことはなんとも言い難い……。やはり平和な世の中が良かったかな。」

  • J:「みんな平和について語るけど、誰もそれを平和的な方法でやってないんだ。人生は短い。だから友よ、空騒ぎしたり、争ったりする暇なんてないんだ。」

  • T:「そう、デモに行くやつは豚ですよ、豚には自己主張もない、同じ声で鳴いているだけなんですから。政治的な革命というのは部分的な革命にすぎないんですから、全人的な意味での革命が必要だということですよね。Oさん、最後に何かあればお願いします。」

  • O:「戦争ですか。—もしも、我々の生きる国が『戦争』という恐ろしい栄光によらねば文明国と認められないというのであれば、甘んじて野蛮国にとどまることにしませんか。そして、歴史の中に未来の秘密が横たわっていると感じませんか。きっとそれは本能的に見つけ出すことができるはずです。変化することが唯一の永遠なのですから。」

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